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リスキリングに使える助成金・補助金|注目される背景やメリットも解説


ITリテラシーの向上やDXの推進が求められているものの、デジタル人材が不足しているのが現状です。社内でデジタル人材を確保するには、リスキリングによるITの知識やスキルの獲得が重要となります。企業としては、コストを抑えつつリスキリングを行い、社内のデジタル人材を確保したいところです。


本記事では、リスキリングに活用できる助成金・補助金について解説します。会社で活用できるリスキリング支援を具体的に理解できるので、ぜひお役立てください。



▼目次



1.リスキリングとは?

リスキリングとは、現代の急速なIT技術の進化やビジネス環境の変化、働き方の多様化に適応するために、従業員が新しい知識やスキルを身につけることです。リスキリングを行うことで、業務効率化や新たなプロダクトの創出につながり、組織全体の競争力を向上させることができます。


リスキリングでは、習得した新たな知識やスキルを実際の業務に活用することが重要です。例えば、データ分析やAI技術を習得した従業員は、マーケティング戦略の立案・改善や業務プロセスの効率化に貢献するなどです。


ただし、リスキリング制度を導入する際には、コストやリソースを確保することが求められます。研修プログラムの開発や外部講師への依頼など、リスキリングにかかる費用を事前に計画し、必要な予算や人的リソースを準備しておくことが重要です。


2.リスキリングが注目される背景

リスキリングが注目される背景は、「DXの普及」と「総合経済対策への組み込み」の2つが挙げられます。背景を認識し、リスキリングの重要性を理解しておきましょう。


2-1DXの普及

近年、デジタル技術を駆使してビジネスやサービスの変革を図る「DX(デジタルトランスフォーメーション)」が急速に広がっています。その理由は、スマートフォンの普及やテレワークの増加といった変化に加え、企業がデジタル技術を活用することで、競争力を維持・向上させる必要が高まってきたからです。


政府もDXの重要性を認識し、さまざまな施策を打ち出してDXを支援しています。その結果、多くの企業がデジタル技術を取り入れた新しい商品開発やサービス改善、組織改革に取り組んでいます。これに伴い、従業員に求められることも変化し、リスキリングによるスキルの習得が必要とされているのです。


このように、DXの普及により幅広いデジタルスキルを持った人材が求められる一方、そのような人材が不足していることが、リスキリングに注目が集まる背景の1つといえます。


2-2総合経済対策に組み込まれるため

リスキリングへの取り組みが盛んになる背景として、政府による総合経済対策への組み込みも大きな要因となっています。2022年の10月に、政府はリスキリング支援を総合経済対策に位置付けることを決定しました。この取り組みでは、5年間で1兆円の予算がリスキリング支援に充てられることが予定されています


企業はリスキリングに関するコストを軽減できるだけでなく、従業員のスキルアップや業務改善を促進することができます。以上のように、リスキリングに対する政府の後押しも、注目を集める背景といえるでしょう。


3.社内でリスキリングを行うメリット

社内でリスキリングを行うメリットには、「業務効率化」「新規事業案の創出」などがあります。メリットを認識したうえで、目的に沿ったリスキリングを実施することが重要です。


3-1業務効率化につながる

リスキリングを社内で実施するメリットの1つは、業務効率化につながることです。リスキリングを通じて習得した新たなスキルにより、これまでの業務を効率的に進められるようになります。残業時間の削減や人員の効果的な配置が期待できるほか、新たな業務に時間を割くことが可能です。


また、これまで外部に依頼していた業務を内部で行えるようになり、業務プロセスがスムーズになることもリスキリングのメリットといえます。


3-2新規事業案の創出

リスキリングにより新しい知識やスキルを習得することで、新規事業案の創出が促進されるというメリットもあります。これまでの専門分野以外の知識や技術を身につけることで、異なる視点やアプローチが生まれやすくなるからです。


例えば、営業担当者がプログラミングを学ぶことで、顧客のニーズに合ったデジタルツールを提案できるようになるかもしれません。また、製造部門の従業員がデザイン思考を学ぶことで、ユーザー目線での製品開発が可能になり、新たなニーズに応える製品が生まれる可能性もあります。


リスキリングを社内で実施すると、新しいビジネスアイデアの創出につながり、企業の成長や競争力向上に貢献するでしょう


4.リスキリング支援に使える補助金・助成金

リスキリングの実施には、さまざまな補助金や助成金が活用できます。代表的な補助金・助成金は以下の3つです。

  • DXリスキリング助成金

  • 人材開発支援助成金

  • 教育訓練給付制度

それぞれ詳しく解説します。


4-1DXリスキリング助成金

DXリスキリング助成金の概要や給付条件、申請方法をご紹介します。


4-1-1助成金概要

DXリスキリング助成金とは、DXに関する研修にかかる経費を東京都が助成してくれる制度です。民間の教育機関であるインターネット・アカデミーなどで研修を行った場合に、経費の一部が助成されます。


対面の集合研修や講師を派遣しての研修に加え、インターネットを介したeラーニングによる研修も対象内です。プログラミングやAI、経営戦略など、DXに関する幅広い講座が対象となり、条件を満たすことで、経費の3分の2、最大64万円が助成されます


4-1-2給付条件

DXリスキリング助成金の申請条件は以下のとおりです。

  • 中小企業の要件を満たすこと(みなし大企業ではないこと)

  • 訓練の経費を従業員に負担させていない

  • 勤務時間内に訓練を行っている

  • 東京都内に本社もしくは事業所(支店・営業所等)の登記がある

  • 受講する研修が国や地方公共団体から助成を受けていない


続いて、対象講座に関する要件です。

  • 費用が一般に公開され、1講座および受講者1人あたりの受講料が定められている(単講座)

  • 単講座、または自社内に外部講師を招き実施するもので、1時間あたり10万円以内のオーダーメイド講座である

  • オーダーメイド講座は20時間以上である

  • 受講者の受講履歴等を確認できる講座である

  • 対象期間内に実施する講座である

  • 通常の業務と区別できるOFF-JTである

  • DXの専門的な知識・スキルの習得・向上を目的とする場合や、資格を取得するための研修である(以下、対象となる目的) ・業務の効率化、生産性の向上 ・集客、販路の拡大 ・新製品や新サービスの開発 ・組織力や営業力の強化


また、対象となるDX講座は原則以下の項目に該当するものを指します。

  • AI・IoT

  • クラウド

  • データサイエンス

  • セキュリティ

  • 基礎理論・経営戦略

  • プロジェクトマネジメント

  • コンピュータシステム

  • 技術要素・開発技術

  • UI/UXデザイン

  • RPA(ロボティックプロセスオートメーション)

  • ネットワーク

  • XR(VR・AR・MR・SR)

  • BRP

  • ブロックチェーン


さらに細かな条件を確認したい方は、厚生労働省の「DXリスキリング助成金 募集要項」をご覧ください。また、DXリスキリング助成金の要件に外れる大企業の場合は、次に紹介する「人材開発支援助成金」を利用できることがあります


4-1-3申請方法


DXリスキリング助成金を申請する流れは以下の手順です。申請企業が行う手続きは太字で記載しています。

  • 交付申請書の提出

  • 申請書の確認・交付の決定

  • 訓練の実施

  • 実績報告書の提出

  • 助成額の確定

  • 助成金の振り込み


令和5年4月までに開始する研修は、「東京都 産業労働局雇用就業部能力開発課 認定訓練担当」に申請しますが、5月以降に開始する訓練は「東京しごと財団」への申請になっています。不明点があれば、「東京都産業労働局雇用就業部の能力開発課、認定訓練担当」に連絡すれば相談が可能です。


4-2人材開発支援助成金

人材開発支援助成金の概要や給付条件、申請方法を、厚生労働省の「人材開発支援助成金」の内容を基に解説します。


4-2-1助成金概要

人材開発支援助成金とは、職務に関連するスキルの向上やデジタル人材の育成など、さまざまな能力開発や人材育成を助成する制度です。


以下の7コースに分けられており、それぞれ内容が異なります。

  • 人材育成支援コース 職務に関連した知識や技能の習得や、中核人材を育てるための研修、有期契約労働者等の正社員転換を目的とした研修などを助成する ♦助成の種類 ・賃金助成 ・経費助成 ・実施助成

  • 教育訓練休暇等付与コース 有給の教育訓練休暇制度などを導入し、従業員が研修を受講する場合に助成する ♦助成の種類 ・賃金助成 ・経費助成 ・実施助成

  • 人への投資促進コース 高度デジタル人材の育成や、IT分野未経験者の即戦力化のための研修を助成する ♦助成の種類 ・賃金助成 ・経費助成 ・実施助成

  • 建設労働者認定訓練コース 建設事業主や建設事業主団体等が、従業員の雇用改善やスキル向上を図るための研修を助成する ♦助成の種類 ・賃金助成 ・経費助成

  • 建設労働者技能実習コース 従業員のスキル向上のための研修を有給で受講させた場合に助成する ♦助成の種類 ・賃金助成 ・経費助成

  • 障害者職業能力開発コース 障害者の職業に必要なスキルの開発・向上を目的に、一定の教育訓練を継続的に実施する施設の設置や運営の費用を助成する ♦助成の種類 ・研修施設や設備の設置・整備・更新・運営費用

  • 事業展開等リスキリング支援コース 従業員に対して新たな分野で必要となる知識やスキルを習得させるための研修を助成する ♦助成の種類 ・賃金助成 ・経費助成

※助成の種類はコース内のメニューや条件により適用される内容が異なります


以上のように、多様なコースが設けられており、自社に適したものを選択できます。


新設された「事業展開等リスキリング支援コース」について詳しく知りたい方は「【人材開発支援助成金】事業展開等リスキリング支援コースの要件や助成額などを解説」をご覧ください。


4-2-2給付条件


人材開発支援助成金の給付条件は各コースにより異なります。ここでは、共通した給付条件のみを掲載します。

  • 職業能力開発計画の作成、従業員への周知が行われている

  • 人材育成制度を新たに導入し、被保険者に適用している

  • 職業能力開発推進者を選任している

  • 定められた期間内に事業者都合による離職をさせていない

  • 定められた期間内で、支給申請書提出日に記載された被保険者数が、規定の割合を持たしている

  • 雇用保険適用事業所の事業者である

  • 期間内に被保険者に支払われる通常の賃金額を支払う

  • 審査書類の整備、5年間の保存を行っている

  • 支給や不支給に関する、指定された書類の提出や実施調査などに協力する

さらに細かな条件は、「厚生労働省 人材開発支援助成金制度導入活用マニュアル」をご覧ください。


4-2-3申請方法

人材開発支援助成金は各コースにより申請方法が異なります。人材育成支援コースの基本的な流れは以下のとおりです。

  1. 職業能力開発推進者を選任する

  2. 職業能力開発計画を策定する

  3. 訓練開始日から起算して1ヶ月前までに訓練計画と必要書類を提出する

  4. 事業内または事業外で訓練を実施する

  5. 訓練終了日の翌日から起算して2ヶ月以内に支給申請書を提出する

  6. 助成金の支給または不支給が決定される


以上の流れで進めると申請が完了します。申請書や開発計画など、提出期限が設定されている書類もあるので、事前に確認して計画的に申請を進めるようにしましょう


4-3教育訓練給付制度

教育訓練給付制度の概要や給付条件、申請方法を、厚生労働省の「教育訓練給付制度」の内容を基に解説します。


4-3-1助成金概要


教育訓練給付制度とは、能力開発やキャリア形成を支援することで、就職の促進と雇用の安定を目的としている制度です。厚生労働省が指定する講座を受講・修了することで、費用の一部が支給されます。


上記の図のように、教育訓練給付の指定を受けた講座を、定められた手続きに沿って受講・修了することが必要です。


また、教育訓練には3つの種類があり、以下のような内容になっています。

種類

内容

一般教育訓練

・その他の雇用の安定、就職の促進に関する訓練が対象

・受講費用の20%(上限20万円)が修了後に支給される


特定一般教育訓練

・速やかな再就職や早期キャリア形成に関する訓練が対象 ・受講費用の40%(上限20万円)が修了後に支給される

専門実践教育訓練

・中長期的キャリア形成に関する訓練が対象 ・受講費用の50%(上限40万円)が受講中の6ヶ月ごとに支給される ・資格を取得し、修了後1年以内に雇用保険の被保険者として雇用されると、受講費用の20%(年間上限16万円)が追加支給される ・失業中ではじめて専門実践教育訓練(通信、夜間制は除く)を受講する場合、開始時に一定の要件を満たせば別途、教育訓練支援給付金が支払われる

以上のように、訓練の種類によって目的や給付額が異なります。


4-3-2給付条件


教育訓練給付制度の給付条件は以下のとおりです。

  • 受講開始時点で、在職中で雇用保険に加入している、もしくは離職してから1年以内である ※妊娠、出産、育児、疾病、負傷などにより適用対象期間の延長を行った場合は最大20年以内

  • これまでに教育訓練給付をうけたことがなく、雇用保険の加入期間が1年以上ある ※専門実践教育訓練は2年以上必要

  • 受講したことがある場合、前回の受講開始日以降、雇用保険の加入期間が3年以上ある


受講の条件に当てはまるか確認し、申請に進むようにしましょう


4-3-3申請方法

教育訓練給付制度の、一般教育訓練給付の手続きは以下の流れで行います

  1. 受給資格をハローワークで確認する

  2. 教育訓練を受講・修了する

  3. ハローワークに給付を申請する

  4. 給付金が支払われる


また、申請に必要な書類は以下の通りです。

  • 教育訓練給付金支給申請書

  • 領収書

  • 教育訓練修了証明書

  • 振込先の通帳またはキャッシュカード

  • 本人・住所確認書類および個人番号確認書類

  • 教育訓練経費等確認書 返還金明細書(必要な場合のみ)


給付の申請は、教育訓練の修了日の翌日から1ヶ月以内に行わなければならないので、早めに書類の準備をしておきましょう。


5.補助金と助成金、給付金のそれぞれの違いについて

さまざまな助成金・補助金・給付金をご紹介しましたが、それぞれの違いはどのようなものなのでしょうか。ここでは、基礎知識として、助成金・補助金・給付金の違いを解説します。


5-1補助金

補助金とは、国や地方自治体が、経済や社会的な目的を達成するために、事業者や団体が行う事業に対して一定の割合で資金を提供する制度です。主に、新規事業の立ち上げや人材育成、技術開発、設備投資などの際に活用できます。


例えば、東京都の観光事業者のデジタル化・DXを支援する「​​観光事業者のデジタル化促進事業補助金」や、職住近接を目的とした「サテライトオフィス設置等補助金」などが挙げられます。


申請する際の注意点としては、各補助金には対象となる事業者や事業内容、支給額の上限などが定められていることです。また、申請書類の準備や提出期限が設けられているため、事前に調査し、適切な手続きを行うことが重要となります。


5-2助成金

助成金は、補助金と同様に国や地方自治体が、雇用・労働環境の改善や技術開発などの目的を達成するために、一定の条件を満たす事業者や個人に対して支給されるものです。働き方改革や人材育成、技術革新など、さまざまな分野で活用されています。


補助金との違いは、要件を満たせば受給される可能性が高いことです。補助金は件数や予算が決まっているものが多く、受給できないことがあります。


助成金の例としては、東京都で実施される、セキュリティ強化を目的とした「令和5年度 サイバーセキュリティ対策促進助成金」や、福利厚生の充実によるES(従業員満足度)向上を目指す「ES向上による若手人材確保・定着事業助成金」などがあります。


申請の注意点は、補助金と同様に、対象となる事業者や事業内容、支給額の上限などを事前に調査し、適切な手続きを行うことです。


5-3給付金

給付金は、国や地方自治体が事業者や個人に対し、特定の条件を満たした場合に支給する制度です。補助金や助成金は事業者が中心ですが、給付金は個人や家庭を対象としたものが中心となり、医療や教育、福祉などさまざまな分野で提供されています。


具体的には、失業時に申請できる「失業等給付」や、離職・廃業後の住居の確保を支援する「住居確保給付金」などがあります。


申請時の注意点は、申請の期限や不正受給にならないかを確認しておくことです。給付金以外にもいえることですが、期限内に申請しなければ給付は受け取れません。また、不正受給になった場合、金銭的・社会的なペナルティが課せられるので注意が必要です。


6.まとめ

ますます重要度を増すDXに対応するには、デジタル人材の育成が欠かせません。効率的に必要なスキルを身に付け、自社の競争力を維持・向上するには、適切な内容の講座を活用したリスキリングが必要となります。リスキリングを検討している企業さまは、今回ご紹介した補助金や助成金を参考に、コストを抑えつつ人材育成に挑戦してみてはいかがでしょうか。


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